インドシナ半島の西部にあり面積が約67万7千ku(日本の約1.8倍)と意外に広い国がミャンマーです。
最近やっとミャンマーという国名に馴れたように感じますが、やはりお歳を召した方や宝石業界の人はビルマと呼んだ方がしっくり来るのではないでしょうか。何せいまだに政情が不安定な国ですからビジネスでもない限りちょっと旅行にという気持ちにはなかなかなりません。
しかし宝石の話となるとミャンマーは世界でも類を見ない凄い国なのです。
それは世界一の品質を誇る宝石が何種類も出るということです。ではどの様なものが有るのでしょう。
まずミャンマーといえばなんと言ってもルビーでしょう。最高品質といわれるピジョンブッラド・ルビーはここのモゴク地区で主に産出します。純粋な酸化クロムが着色成分として多量に含まれるため非常に明るくて濃い赤のルビーになるのです。不思議な事に隣国のタイで採れるルビーは一般的に濃い赤なのですが明るさに欠けるものが多く、ベトナムやスリランカ産は明るいのですが色が淡いという欠点が有ります。
又、ミャンマーではルビーの産出量よりかなり少ないのですがサファイヤも採れます。ところがこの僅かに産出するサファイヤの中にロイヤルブルー・サファイヤと呼ばれる色調が明るくて濃いブルーでしかもテリの良い最高品質のものが有るのです(インドのカシミール産サファイヤは別格ですが現在殆ど採れませんので除きます)。
さらに日本で特に好まれる翡翠(ジェダイト)の琅かんと呼ばれる最高品質の石もここでしか採れないのです。
そしてその他にもルビーと間違えるくらい明るいレッドスピネル、澄んだグリーンのペリドット、アイオライト、ジルコン等のやはり高品質な宝石が採れるのです。
勿論、ピジョンブラッド・ルビーやロイヤルブルー・サファイヤそして琅かん質の翡翠といったものはいくらミャンマーといえどもそうそう採れるものではありません。
ましてや1カラット以上とか3カラット以上という風に石が大きくなればなるほど極端に稀少になり、非常に高価な稀少宝石(レアジェム)となるのです。
この様にミャンマーは一般宝石に関しては恵まれている国なのですが、どういう訳かレアストーン特に鉱物そのものが稀産な石となるとそんなに種類が有りません。
又、ここでしか採れないレアストーンというのも殆ど見当たりません。しかし少ないのですが比較的高品質な石も有ります。
まずシリマナイト(フィブロライト 珪線石 Al2SiO5 硬度6.5〜7.5)が挙げられます。この石は別項で詳しくお話させて頂いてますが、日本ではシャトヤンシーの出るシリマナイト・キャッツアイが一時期脚光を浴びた宝石です。この石のライトブルーからグリーンの透明石が稀少で主にスリランカで産出するのですが、ブルーの石はミャンマーの方が色の濃いものが有るという話です。
フィンランド産やロシア産程ではありませんが明るいグリーンで質の良いクロムダイオプサイド(透輝石 CaMgSi2O6 硬度 5.5〜6.5)も採れます。
その他にソーダライトの変種のハックマナイトやコーネルピン、エンスタータイト、カイヤナイト、ブルーアパタイト、イエローダンビュライト等を産出します。
しかし、これらのミャンマー産レアストーンは殆ど日本には入ってきていません。「どうしてもこの国の石」という方には残念なことです。
ミャンマーのモウシッシッという所で30数年前から採れ出した濃淡の緑の斑模様が美しい石が現在でも話題になっています。濃い緑の部分が黒っぽく見える事やモウシッシッがジェダイトの産地である事から非常に稀少なクロロメラナイト(濃緑玉 多量の鉄分を含むジェダイト)として誤って売られた事も有ります。
ジェダイトを含んだアルバイト(曹長石)なのでジェード・アルバイトと呼ばれたり、隕石の中から発見されたクロムを主成分とした輝石と同じだからコスモクロアと呼ばれたり、産地名をとってモウシッシッと呼ばれたりして混乱しています。
20年ほど前に日本産のコスモクロアを最初に発見した方が研究の結果ミャンマー産はコスモクロアではないと異論を唱えておられます。
両方の石を見ましたが肉眼では違いが全く判りません。しばらく論議が続きそうなので結論が出るまで産地名に因んだモウシッシッと呼ぶのが無難でしょう。
何れにしましてもこの石は高級宝石の多いミャンマー産にしては、とても安価で魅力的な石の一つと言えるでしょう。
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