| アフリカ大陸の南東沖にある島で日本とは余り馴染みが無い様に思われる国がマダガスカルです。
地図では大きなアフリカ大陸の横にありますから小さく見えますが、面積が約58万7千ku(日本の約1.6倍)もあり結構広い国なのです。主産業はコーヒーやサトウキビ等の農産物なのですが、鉱物資源もかなりあり勿論色んな宝石も多く採れます。
ところがこの国で採れた宝石でもマダガスカル産の何々というような表現は殆どされていません。
これはここでしか採れない宝石が少ないこと、比較的高品質なものが採れるのですがその宝石の代名詞になるほどでもないこと、鉱山経営の殆どを外資系企業(フランス、アメリカ等)が占めており直接日本には輸出されていない等の為だと思われます。(但し、業者間ではマダガスカル何々と呼ぶことがあります)
マダガスカルで採れる一般宝石の中で比較的多く採れ良質なものにはベリル(エメラルド、アクアマリン)、クリソベリル(クリソベリル、アレキサンドライト)、ガーネット(アルマンダイト、ヘソナイト、スペッサータイト)、クオーツ(アメジスト、シトリン)、コランダム(サファイヤ、ルビー)、ムーンストーン、アイオライト、ジルコン等があります。
マダガスカル産のエメラルドは色が淡く黄色味があり余り上質とは言えないのですが、アクアマリンはサンタマリア・アフリカーナと呼ばれているモザンビーク産のように色が濃くかなり高品質です。
アレキサンドライトはロシア産、ブラジル産、スリランカ産というふうにそれぞれの産地特有の変色性があるのですが、この国の石はどういうタイプなのかデータ不足でよく判りません。
しかし、結構良質のものが採れているという話です。
マダガスカル産のナチュラルカラーのシトリン(黄水晶)は、色や透明感がブラジル産のものより優れているものが多く、恐らく世界でもトップクラスの品質だと思われます。
ガーネットはアルマンダイトの他にヘソナイト(透明なグロッシュラーライト 灰礬柘榴石 Ca2Al3(SiO4)3 硬度7)が採れます。普通ヘソナイトは褐色を帯びた黄色からオレンジ色の石ですが、ここの産地のものは赤味の強いシナモン・カラーの石が多くシナモンストーンと呼ばれています。
又、スペッサータイト(満礬柘榴石 Mn3Al2(SiO4)3 硬度7.25)は黄色からオレンジ色のガーネットですがマダガスカルでは稀に赤色の石が採れることがあります。さらに極めて稀な完全に無色のリューコガーネットも産出するのです。
赤いスペッサータイトやリューコガーネットはレアストーンですがマダガスカルではその他に色々なレアストーンが採れます。
まずピンク系ベリルのモルガナイトがあります。マダガスカル産のモルガナイトはブラジル産に匹敵するほど良質でしかも大粒の石が採れるのです。
又、イエロー系ベリルのヘリオドールも非常に色の鮮やかな石が採れます。勿論これらのベリルはカットに値するものとなると稀少です。
そしてベリルといえば最近この国で新宝石発見という衝撃的なニュースがありました。
2002年11月にマンドロソノロという村の近郊で採れたピンクトルマリンに酷似した宝石です。
色調は濃いピンクからラズベリー色をした半透明から透明な石で半透明なものはシャトヤンシー(キャッツ)の出るものも有ります。
発見当初は非常に色の濃いピンク色のベリルでモルガナイトの変種だと思われていた様です。
しかしその後の分析の結果主成分は他のベリルと同じなのですが、モルガナイトの約5倍のセシウム(Cs)という元素と相当量のリチウム(Li)が含まれているのでベリル族の新鉱物ということが分かったのです。
翌年の2003年のツーソンショーでデビューして話題になり、又マスコミに採り上げられるなどしたため業界や石好きの人には1967年のタンザナイト発見
(この後1989年にパライバトルマリンの発見が有りましたがパライバはあくまでトルマリンで新鉱物ではありません) 以来の画期的なニュースとなったのです。
この話題性と不明な埋蔵量のために価格が2003年から4年まで上質なルースで1カラット当たり20万円もの高値がつくものも有りました。現在はかなり落着いている様です。
宝石名は色調からピンクベリルやラズベリー色のベリルの一種だからラズベリルなどとコマーシャル・ネームで呼ばれていましたがイタリアの研究者の名前を取ってPezzotaite(ペツォッタイト)と付けられました。
この石にはパライバトルマリンの様な強烈な美しさは有りませんが、現段階の稀少性と話題性からマニアなら一つは手に入れたい宝石です。
マダガスカルでもトルマリンが採れるのですがここでしか採れないちょっと変わった珍しいものがあります。一つはバイオレットトルマリンで日本では殆ど目にすることがありません。
もう一つはウオーターメロン・トルマリン(柱状結晶の外周と中央部の色が違うパーティカラード・トルマリン)なのですが、輪切りにすると中心から3方向に放射線状の條線があるものです。それがちょうどドイツ車のベンツのマークに似ていますのでメルセデス・トルマリンと呼ばれ珍重されているのです。
マダガスカル産のレアストーンの中に世界でも最高品質だと思われものがあります。それはムーンストーンと同じフェルドスパー(長石)の一種のオーソクレース(正長石 KAlSi3O8 硬度6)です。無色とイエローのものが採れるのですが、特にイエローオーソクレースは色や透明感が優れており又テリもそこそこ有りますので非常に美しい石です。これをカットすると同じ黄色の石であるシトリンとは少し違った長石独特の雰囲気を持った魅力的な宝石になります。
しかし残念なことに最近は色の薄いものしか産出しなくなっていますので、入手できる色の濃い原石やルースは恐らくかなり以前に採れたものだと思われます。又、価格も比較的高価です。
イエローやバイオレットのスキャポライト(柱石 硬度6)も透明感、色共に良質のものが採れるのですが、肉眼で見る限り他の産地の石と変わり無く余り特徴がありません。
又、マダガスカルではハンバーガイト(ハンベルグ石 Be2BO3OH 硬度7.5)という聞きなれない名前の石が採れます。この石は鉱物そのものが非常に稀産で、さらにカットに値する原石となると益々稀少です。色は無色から白色の石で稀少性以外に余り宝石として魅力の有る石とは言えないですから専ら収集家向けの石となります。
その他にマダガスカルで産出するレアストーンには淡緑色から濃緑色のダイオプサイド、イエローダンビュライト、コーネルピン、濃紺のデュモルチェライト・クオーツ等があります。
この様にマダガスカルは多種の宝石、鉱物が量的にも多く採れ、しかも今後も新鉱山が発見される可能性がかなり高いですから宝石のプロのみならず宝石ファンにとっても大変魅力的な国と言えるのです。
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