アジア大陸中南部、インド半島の大部分を占める国がインドです。
面積は約328万8千Ku(日本の9倍弱)と広大ですが人口が8億人以上で中国に次いで世界第2位という爆発的な人口増加に悩む国です。又、隣国のパキスタンとはカシミール地区をめぐって昔か逡エ争が絶えないという問題も抱えていて色々大変な様です。
しかし地下資源や水力エネルギーは豊富で各種の鉱工業が発展している国でもあるのです。インドで人類が生活を始めたのは古く紀元前3千年頃からのインダス文明ですから約5千年もの歴史が有ることになります。
そして宝飾品や装飾品を身に着けるということも非常に古くから男女、王侯貴族や平民等という階層を問わず広く習慣として有り現在でも伝統的に受け継がれてきています。特に頭から足のつま先まで豪華に着飾るインド・ジュエリーと呼ばれるものは有名です。
この様にインドでは宝石は昔から多くの人々に親しまれてきたのですが、どういう訳かここで採れる石はあまり高級品というイメージが無くインド産というと品質の悪い宝石と思われがちです。
これは透明感の殆ど無い低品質なインドスタールビーやガーネット、ムーンストーン等の非常に安価な石が大量に採れるということだけが良く知られているからなのです。
ところがインドで過去に産出した宝石には世界一と称されるものが幾つも有るのです。その中でも特筆できるものがダイヤモンドとサファイヤです。
インドではなんと今から一千年程前から既にダイヤモンドの採掘が行われており(勿論ダイヤモンドをカットできるようになったのは15世紀のことで初期のブリリアントカットは17世紀、完成されたのは20世紀ですからこの頃は原石のまま利用したのでしょう)
1725年にブラジルでダイヤモンドが発見されるまで世界で最も古く重要な産地だったのです。現在でも少量ですが産出しておりたまにかなり大粒で質の良い原石が採れる様です。
そして驚くべきことにかの有名なホープ・ダイヤモンドやドレスデン・グリーンダイヤモンド等がインド産なのです。ホープ・ダイヤモンドは45.50カラットの濃いサファイヤブルーの石で大きさや色の珍しさもさることながらこのダイヤモンドを所有した者が次々に不幸な目に遭うという伝説で知られた宝石です。
この石は110カラット以上あった原石を67.50カラットにカットされフレンチ・ブルーダイヤモンドと名付けられましたがその後リカットされ現在の大きさになりました。
ヘンリー・トーマス・ホープというイギリスの大富豪が買い取り永年コレクションになっていましたのでこの名前が付けられたのです。最終的にはハリー・ウイストン社が入手し同社がワシントンのスミソニアン自然史博物館に寄贈しました。
ドレスデン・グリーンダイヤモンドはアーモンド形にカットされた41カラットの明るいアップルグリーンの石で、現在のところこの色をしたダイヤモンドは世界に一つしかないという極めて珍しい宝石です。
そしてインドでは宝石収集家が一つは絶対に手に入れたいと思っている羨望の的カシミール・サファイヤが採れます。ミャンマー産のロイヤルブルーサファイヤを凌ぐ世界最高の美しさを持つこのサファイヤはインドのジャム・カシミール州ザスカルという所で産出したものです。
ここはヒマラヤ山脈の北西の海抜5,000m以上という高地でしかも一年のうち殆どが深い雪に覆われているという場所ですから元々産出量が少ないうえに採掘が難しく僅かしか採れません。現在では殆ど採れていませんので手に入れるとすれば昔採れた石でアンティークジュエリーに使われているものを知名度の高いオークションで落札するしかないということになります。
カシミール・サファイヤの魅力はこの様な稀少性だけでなく他の産地には無いコーンフラワー(矢車菊)カラーと呼ばれる明るくて濃い純粋なブルーと、強い光を当てるとモヤがかかった様に中から幻想的な乳白色の光が浮き上がってくるヘイジー効果にあります。
勿論カシミール産のサファイヤの中にも品質の良いものとそうではないものが有り、同じ大きさの石でも価格差が何十倍にもなるということが有ってもおかしくないのです。
インドではサファイヤと同じコランダムのルビーも多く産出します。特にカルナタカ州のコラールという所で採れるルビーは大粒でアステリズム効果(スター効果)が非常に良く出るインドスタールビーとして有名です。
ただここで採れるものの多くは紫色を帯びた暗赤色でしかも透明感がかなり悪い為に世界で最も安価なスタールビーということになってしまいます。又、日本ではルビーではなくバイオレットスターサファイヤに鑑別されてしまう石も有りますので注意が必要です。
しかし最近インドでは詳しい産地は不明ですが比較的明るく透明感の良いルビーも少量産出しており日本にも入って来ている様です。
インドではクリソベリルやその変種のアレキサンドライト、クリソベリル・キャッツアイも採れます。アレキサンドライトはスリランカ産より品質の劣る石が多いのですが、クリソベリルは眩しく感じるほど明るくて美しいレモンイエローの石や透明感の良い爽やかなグリーンの石が有りブラジル産よりも綺麗といえるでしょう。
又、キャッツアイは最高品質といわれるハニーカラーではありませんが他の産地にはあまり無い美しいグリーンで目のはっきりした石が採れます。
その他のインド産の一般宝石にはベリルのエメラルドやアクアマリン、長石グループのムーンストーンやサンストーン、クオーツグル−プのグリーンアベンチュリンやタイガーアイ、ブラッドストーン、比較的明るい紺色のアイオライト等が有ります。
それではインド産のレアストーンにはどのような石があるのでしょう。今から数年前に物珍しさで話題になり普通の宝石店でも扱っていたレアストーンでシリマナイト・キャッツアイ(フィブロライト 珪線石 Al2SiO5 硬度6.5〜7.5)という石があります。
白色から褐色をしており半透明で非常に鮮明なキャッツアイが出てクリソベリル・キャッツアイよりかなり安いのに見劣りがしないということで結構買われた方がおられます。
当時はスリランカ産が輸入されていたのですが安いといっても3カラット位のルースで10万円以上していました。ところが暫くして品質の良いインド産が五分の一程の価格で入って来て混乱したという事が有ったのです。
この様にインドではシリマナイト・キャッツアイの高品質なものが採れるのです。シリマナイトにはシャトヤンシーのない透明石も有りインドでも採れます。
又、アポフィライト(魚眼石 硬度4.5〜5)という石が採れます。
この石の無色のものはそれほど稀少ではないのですが、インドでは非常に明るくて透明感の良いグリ−ンのものが採れ唯一カットされることのある石です。
しかし劈開性が強く脆い為にカットし辛く滅多にルースになったものを見ることはありません。その他にユークレース、プレーナイト、スター・ダイオプサイド等の稀少石を産出します。
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